○技術
木組み
当工房のモノ作りでは、木工の技術としては伝統的な手法である「木組み」の技術を主に使ってモノ作りをしています。
これは、日本に昔から受け継がれてきた伝統的な木工技術を生かす〜という事もありますが、それ以上に、木でモノを作る場合に、より良いモノ。より頑丈で長く使えるモノを作る〜と考えた場合に、「木組み」の技術は合理的で優れた方法だからです。

各種のほぞ加工がなされたイスのパーツ
しっかりと精度の高い木組みの加工をすることで丈夫な
家具を組み上げるのが伝統的な木組みの技術
日本古来からの建築技術にも見られる木組みの技術の確かさは、今もたくさん残っている多くの歴史的な木造建築によって証明されています。この木組み技術の特徴は、部材が刺さる部分(“ほぞ”といいます)が部材が刺さる穴(“ほぞ穴”といいます)よりも、若干大きく加工されている点です。
ほぞを、ほぞ自体よりも小さなほぞ穴に打ち込んで木を組む事により、ほぞによる木組みの接合部は、強く締め付けられ、強い接合力を持った家具に組みあがります。椅子のような、点の接合で組み上げられる家具も、このほぞを使った木組みの構造で組む事により、丈夫で長く使える家具になるのです。

写真は当工房の椅子の接合に使われる「楕円ほぞ」の仕口
従来の四角いほぞに比べ、締まり代方向の接着面が広く、
ほぞのバリエーションの中でも強度がある。
ただ、このほぞ加工、木組みの加工は木材の性質、加工場所などをしっかりと見極める必要があります。ほぞのきつさ加減を調節し、高い精度で加工をしないと、強い接合強度を得られないばかりか、組立て時にほぞ穴を割ってしまう事があります。まさに職人の腕の見せ所ですね。
最近の一部の形だけまねた木組みの製品には、この組立て時の破損を防ぐ為にゆるゆるのほぞ組みで組み上げる場合もあるそうですが、当工房の木組み加工では、伝統的な強度のある木組み加工でモノ作りに取り組んでいます。
機械工具の活用
優れた木工仕事をイメージする時、鑿(のみ)や鉋(かんな)に代表される“手工具”の仕事を頭に思い浮かべる人は多いと思います。これは間違いではありませんが、現在の木工事情では、その加工のほとんどを、木工機械に頼って行うのが一般的です。モノによっては手工具など一切使うこと無く作品が完成する事もあります。
では、僕の工房ではどうかと言いますと…機械加工9割、手加工1割といった感じです。機械加工は大量生産、工業生産的なイメージが強いので、手作りクラフト、木工クラフトを作る個人工房には不似合いだ!と思われるかもしれませんが、板を均質(同じ厚み)に削る。しっかりと直角で切込みを何本も入れる。そんな作業には、手加工で行うよりも、機械で行う方が全然早くきれいに加工ができます。
モノを作るスピードというのはそのまま価格に反映されます。早く作るほど、安価にお客様に製品を供給できる事になります。そして、より良い製品を作るためには加工精度はより高い方が良いのは当然です。これらのファクターを考慮すれば、木工作業のほとんどを機械を使って行うのはごく自然の流れと言えるでしょう。
「手作り」である事にこだわるために、“高い”物を売るよりも、効率的に作業できるところは機械に頼って“安く”モノを作る方向性で、当工房はモノ作りをしたいと思っています。といいますか…「機械」「手工具」という道具の使い分け自体を、それほど意味あるモノとして捕らえずにモノ作りに取り組んでいる〜というのが正しいですね。

水引きしたパーツを軽く鉋で削ってからサンドペーパーで仕上げます。
こうする事で、平面性も確保しつつ、早く、きれいな仕上げが可能です。
当工房が考える職人のあり方は、「より良いモノ」を「より多くの人に使ってもらう」ということです。より良いモノを作るために必要なら機械を使って加工する場面もありますし、手工具を使って加工をする場面もあります。
木工機械も手工具もそれぞれ1つの木工道具です。機械だからありがたい。手工具だからダメとか、そういう問題では無いと思っています。当工房ではそのようなこだわりを持たず、適材適所、道具を使い分けてより良いモノを作っていきたいと考えています。
ネジや釘の使用
伝統技術に強いこだわりを持った職人さんや、純粋に「木だけ」にこだわる人には、ネジ・釘の類をまったく使わずにモノ作りに取り組む人もいますが、当工房では、作品の構造にあわせて、柔軟に木ネジや釘を使ってモノ作りをしています。
木と金属は相性が悪い!ネジを使ったモノ作りは邪道だ!と言うようなストイックな木工もあるようですが、ネジ、釘は用途を選べば、便利な道具である。というのが僕のモノ作りのスタンスです。当工房では、木組みの補強的な用途や強い付加のかからない部分には、適材適所を考えてネジや釘を使ってモノ作りをしています。
新しい技術の導入
日本には伝統的な優れた木工技法がある〜というお話を冒頭にしましたが、現在のモノ作りの業界では、世界中で使われている木工に関する情報が手に入ります。その中には、日本の伝統技法とはまた違った方法で、優れた木工技術がたくさんあります。
当工房のモノ作りでは、日本の伝統的な木工技術をベースにモノ作りをしていますが、新しい技術、優れた木工方法を柔軟に取り入れ、現代の木工家として、昔の木工ではできなかった、今ならでは「良いモノ作り」をしていきたいと考えています。これは、「伝統的な技術を守る」という目的ではなく、「より良いモノ」を作るのが職人としての命題だと考えるからです。
同じ丈夫な家具なら、より、安く、効率の良いモノ作りをする。そのために、使える技術や道具は、しっかりと吟味した上で積極的に活用していこう!というのが当工房の方針です。

当工房での板はぎ(複数の板を接着し大きな板を作る)作業。
ビスケットジョイントと呼ばれる欧米の手法を取り入れています。
接着面に差し込まれたブナの圧縮材が接着剤によって
ふくらみ、接着された板に強い結束力を与えます。
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