○素材
当工房のモノ作りの基本は「無垢の木を使ったモノ作り」です。イスなどの家具から、小さな木工クラフトにいたるまで、その主な素材は無垢の木を使っています。これは、無垢の木で作る木工クラフトは合板で作られた物とはまったく違った木の魅力を持っているからです。
無垢の木は、合板で作られた家具のように、無欠点(むきず)、無節の均質な表情を持っていません。木の表面には、その木の育ってきた歴史と個性が見られます。木目には色調の違いや、節などの変化に富んだ表情が見られます。
合板の製品開発は「いかに均一の品質、表情の板を作るか」という目的で進められてきました。合板は無傷、無節の均質な板を作る為に表面に「化粧材」と呼ばれる厚さ1ミリにも満たないペラペラの木目を貼った物です。合板の家具は均質で一定の品質、表情を持っている半面、木の表情はどこか無機質で個性が無いのはこのためです。
無垢の木は長く使い継がれ、表面は日に焼け、一見ボロボロになってしまっても、鉋(かんな)で表面を薄く削りだすだけで、下からまたきれいに生きた木目が出てきます。このため、適切な技術で組み上げられた無垢の木工クラフトはメンテナンスを怠らなければ、とても長い間にわたって使い続けることができます。古く汚れてしまった家具でも、きれいにクリーニングし、再び使い続けることができます(古くから伝わる木のアンティーク家具がいつまでも残り、使い続けていけるのは使い手の愛情が欠かせませんが、この無垢の木を使ったモノ作りである。ということが大きな要因と言えます)。
当工房が、無垢の木を使ったモノ作りをする理由。それは、長く愛着を持ってもらえるようなモノ作りをしていきたい!そう考えた時に、「無垢の木」というモノは、とても素材として優れているからです。
ときに、無垢の木をうたい文句にしてモノ作りをすると「懐古趣味的なことしてるね」というようなご批判を受けるようなことがあります。
無垢の木は、素材に均質性がありません。木の性質は樹種によっても異なりますし、同じ木でも育った場所が違えばまたその性質は異なります。同じ1本の木から挽いた板でもそれぞれ違った個性、表情を持っていて、別の木のように見える事もあるのが無垢の木です。
昨今は接着剤の技術も格段に向上しており、合板であっても、とても長く使える製品はたくさん出ております。このように合板技術の進歩が目ざましい昨今、無垢にこだわる意味ってなんなの?そういう意味で「懐古趣味な事してるね」というご批判につながるのだろうと思います。
100年前の木工家ならいざ知らず、現在の木工家である私はこの合板の進歩をただ「無垢の木へのこだわり」の一言で無視する訳にはいかない所があると思っています。合板にはその使い勝手において、無垢の木には無いメリットがあることもまた事実だからです。
当工房のモノ作りでも、合板を使う場合があります。例えば小さな箱物の底板などにはシナ合板を使っています。無垢の木はその特性上、薄く削れば薄く削るほど反りやすく、かつ強度的にも不安なものになってしまいます。この様な場所には進んで適材の合板を使い、品質的、コスト的にメリットのあるモノ作りをしています。
また、作品作りの要望、デザイン的要素の解決策として、素材に合板を使う場合もあります。その際も、当工房では無垢の木を使ったモノ作りのスタイルをベースにおいて、扱い方に無理のないよう、使われる場所、使う用途を考えてMDFやシナ合板、集成材などとも、上手に付き合っていこうと考えています。
無垢の木の魅力を持ったモノ作りを第一に考える事は大事な事です。ただ、無垢にこだわるあまりに、品質として劣るもの、使い勝手の悪いものを作ってしまってはそれこそ本末転倒であり、より良いモノを作る〜という本来の自分の目指すモノ作りとは違った方向に行ってしまいます。
当工房では、木が持つ本来の魅力を生かした、無垢の木のモノ作りをしています。そして、「現代の木工家」として、進んだ技術、優れた素材を有効に柔軟に活用することで、さらにより良い木のモノ作りをしていけたらと考えています。
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