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VOL.6(2008年3月10日)
部屋の中で帽子をかぶるのがデザイナー


 最近、ちょっと他所に提出する資料を作るのに、自分のプロフィールとか作風について自己紹介文を作っていたのですが…その作業の中で思ったことをつらつらと述べてみたいと思います。
 ちなみに、この資料、今度僕の所で作っている木のおもちゃをある展示場の企画展示で置いてもらえる事になって、そこで作品に添えるために作っている物なんです。

 で、その展示会について何度か連絡を取り合っていて、その時気付いたんですが

 どうやら僕は「木のおもちゃ作家」「おもちゃデザイナー」というモノにいつの間にかなっていたみたいです。(いや、もっと早く気付くだろう というツッコミは甘んじてお受けします)


 ふと、まわりを見回して見てみると、どうやら僕みたいに独自の木のおもちゃ作りに取り組んでいる人たちって「作家」って言ったり「デザイナー」って自称しているみたいです。なんかかっちょいいぞ!
 外から見ている人には、自分もそういう人達と同じように見えていたらしいです。(実際にやっている事は一緒と言えば一緒ですから)
 自分がやっている事が「作家」もしくは「デザイナー」だったという事にいまさらながら気付いた自分です。


 ただね…

 イメージが合わないなぁ…(自分で言うな)


 いやね、僕がもともとモノ作りの世界に興味を持ったのはまさしく「作家」さんになりたかったからなんです。がね…

 僕が作り手を目指したのは、建築学科の学生の時でした。
 講義の一環で「椅子」のデザインをする〜という課題があって、図面を引いたり実寸模型を作ったりしてみた時に「家具のデザインってなんて面白いんだろ!」って思ったんです。
 「自分でデザインした物を自分で作れる作家になりたい!」
 そう思ったのはこの時でした。

 余談だけど、それは何でか?って言ったら
 「自分のデザインやイメージを他人に表現できるもんかい!自分のイメージやデザインを思った通りに表現できるのは自分だけだ!」
 と思ったから。
 なんとも傲慢で思い上がった若かりし時の自分ですな…(遠い目)
 あの頃はまだ若かった…というコトで大目に見て下さい。


 すみません。話がズレました。元に戻そう。

 そう、自分はもともとは「作家」「デザイナー」志望だったんです。

 でもね、その思いは変わっちゃいました。
 モノ作りのことを何にもわかっちゃいなかった(今でも自信を持ってわかってるとは言えませんが)若かりし日の思いなんて、実際のモノ作りの現場で受けた数々のカルチャーショックで粉々微塵に砕かれました。

 もちろん、「デザイナー」や「作家」という言葉に対する憧れもね…

 いつの間にか僕の憧れは「作家」や「デザイナー」なんていう言葉よりも、ただ寡黙に技術にまっとうにモノ作りに打ち込む「職人」に完全に移り変わっていたんです。

 そんなわけで、この心変わりは今もあの時のまま「作家」とか「デザイナー」っていう、(普通に考えれば)かっちょいい名前に対する憧れも今は無く、いつの間にか自分が「作家」とか「デザイナー」と呼ばれていた事に違和感を覚えたワケでした。

 ただね、別に嫌ってコトじゃあないんです。

 外から僕の仕事を見てくれていた人が、僕の仕事を見て「作家」さん「デザイナー」さんって思ったコト、そう呼んで頂くことに対し、どうこう言うなんて気はおきません。むしろ、自分の仕事の呼び名がよくわからない現状の方が問題だ。

 僕が自分の仕事を人に説明する時ってなんて言っているだろう?

 大抵は 「木でモノを作る仕事をしています」 だなぁ…

 確かにデザインはしていますよ。お客様の要望を聞いたり、実用性や安全性を考えながら…でも、デザイナーって実感はありません。

 もちろん、木で創作的にモノ作りもしています。
 ただ、創作って言っても別に自己表現…とかそういうのじゃなくて…木を使った「道具」「実用品」を作るだけ…おもちゃに至ってもそれは変わりません。
 木の美しさを生かすことは考えているけど、それはあくまで木の作り手としては自然な事で、別に自分のデザイン表現を前に立ててどうこう…って思いは無かったんです。


 すみません。自分でもよくわかっていない自分のキモチをこうして述べても、読んでいる人は何がなんだか…って感じですよね…。


 ただ…何て言うんだろう

 全てが全てこうだって言うわけじゃあないんだけれど、「デザイナー」とか「作家」さんっていう言葉の響き、イメージというのは、「自己実現」のための「造形」をしている人を指して言ってる場合がほとんどだと思うんです。

 まず、自分が作りたいカタチがある…デザインがある…

 それを実現するために行うモノ作り=デザイナー、作家
 というイメージです。


 対して

 僕が行うモノ作りは、まず「木」がそこにある。そして、使う人(おもちゃであれば子供ですね)の事を考える…。

 コレが僕のモノ作りのスタンス。

 自分で作りたいモノをデザインしているようで、本当は違う。
 木の素材を使う意味…素材の安全性、木が持つ本来の質感、奏でる音、美しさ…
 これらを生かして、まっとうな道具を作る。ウチで言えばおもちゃです。

 例えば音を奏でる赤ちゃん向けのおもちゃを作るとします。
 木の質感を生かすには、
 どんな設計にすれば良い音、製品として優れた機能になるか
 十分な安全性、頑丈さを満たすにはどのような構造や成形が必要か
 お客様に気軽に買える値段にするために、同時に採算の取れるモノにするため、効率の良い製造工程を考え、それに合ったカタチを考える…
 (ただカタチを考えるだけのデザイナーはこの部分がわからないし、ただ芸術性や自己実現のモノ作りでは、そんな効率なんて考える事すら無いでしょう)

 こんなコトを考えながら作っているのが僕のモノ作り。

 ただ、1つ言える事。

 僕のモノ作りはアーティスティックな「創造」、デザイナーの表現による「自己実現」っていうのとは違っていて、僕の作る木のおもちゃはあくまで工業的に、合理的に、必然的に作るカタチは決まってきているっていう事です。

 またいらんコトを言ってしまったな…

 コレを読んで、「木のぬくもり」が好き、「手仕事的なクラフト」が好き、「独創的なモノ作りが好き」…っていう人はもう僕の木のおもちゃに見向きもしなくなっちゃうかな…?

 でも、これが本当の僕のモノ作り。

 僕は「職人」っていう言葉に純粋にあこがれを持っています。
 ココで言う「職人」っていうのは、仕事に「無駄」が無い人達で、ただただ「良いモノ」を作るためにエネルギーを注いでいる人達の事です。

 この人達は、ただ「良いモノ」を作ることにまっとうで
 「良いモノ」っていうのは、使い勝手が良かったり、しっかりとした作りで長く使える物だったり…評価軸はいろいろですが、真面目な技術で流行り廃りなんかじゃ左右されない、「優れたモノ作り」をする人達の事です。

 僕はそういうモノ作りをしたい。


 自分のイメージを実現したい、自分の考えるカタチを作りたい〜っていうデザイナー的なモノ作りっていうのは僕の考えるモノ作りとは違ってます。
 デザイナー家具とかデザイナー系、と呼ばれるモノ作りのジャンルがあるみたいだけど、往々にして使い勝手や耐久性といった道具本来の機能が2の次に回されています。コレは芸術的かもしれないし、デザインとして優れているのかもしれないけど僕のやりたい事じゃあないんです。

 昨日は久々に本屋さんに行ってきて、それこそもう、何年ぶりだろう?っていうくらい久しぶりに「デザイン系」と呼ばれる雑誌を開いてみました。
 派手で華やかな数々の都会のデザインオフィス、クリエイターの写真は僕にはよく理解できない部屋の中なのに帽子をかぶった人たちが写っていました。
 最新(?)のファッションをまとった、オシャレというか奇抜というか(部屋の中で帽子をかぶるっていうのは、合理的に考えれば珍妙な事だと僕は思う)…華やかだけど、それは僕が目指すところとは違った嗜好性の人達のコミュニティでした。

 きっとこういう人達が「デザイナー」と呼ばれる人達なんだろう。


 塗料と木屑に汚れたジーンズに、機械に巻き込まれないようなすその絞った自分の服装を見て、やっぱりこう思うわけ。

 おいらはデザイナーぢゃねぇな…少なくともこの人達とは違うな…と。



(言い訳のような追記)
 僕はこんなコトを書いていますが、お仕事の話や、周りにご紹介頂く時に「デザイナー」と言われたり「作家」と呼ばれたりする事に別段「嫌」な気持ちは一切感じていません。文中にあったよう、僕自身、自分の仕事の説明の仕方が「木でモノ作りをしています」なんてアヤフヤな物言いなんですから…先方の方が困るってモノでしょう…そこに気を回された方には本当に「すみません」とこの場を借りて言いたいと思います。(僕もいっときは名刺に「木工作家」って入れていた時期がありました…(ただコレはかなりレアで持っている人はもういないでしょう))

 文中では自己実現のためにモノ作りをするのが「デザイナー」というように言っていますが、コレは話をわかりやすくするために、あえて誤解恐れず極端な言い回しをしています。
 僕自身だって、モノ作りを通して「自己実現」をしている点で「デザイナー」である事に変わりはありません。ただ、目的と手段、鶏と卵のお話のように、どっちが前に来るか、モノ作りに取り組むスタンスというのを見たとき、かなり違うものがあるということを言いたかったんです。稚拙な文章力と未熟な自己理解のため、誤解を招いたとしたらごめんなさい。
 
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