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VOL.2 2008年2月12日
 木のおもちゃにブナっていう木を使うわけ

 店頭に並んでいる無垢の木のおもちゃを見ると、たいていは「ブナ」が使われています。ヨーロピアンビーチって書いてある物も見ますけど、これは「ブナ」のこと。「ビーチ(beech)」=「ブナ」ということです。

 ちなみに、僕の工房で作っているおもちゃの材料も、この「ブナ」を使った物がほとんどです。(表記にはかっこつけて、ヨーロピアンビーチって書いてます )

 世の中には、いろんな木の種類があるのに、木のおもちゃには「ブナ」が使われているこの理由?あなたはご存知ですか?今回はそんなブナについて書いてみようと思います。

 一般論として木のおもちゃにブナを使う理由は以下のように言われています。

 ・キズがつきにくい
 ・適度な重さがある
 ・加工がしやすい
 ・手触りが良い

 などなど。

 実際に、杉、ヒノキ、ナラ、ケヤキ、カエデ、ホオ、カツラ、クリ、クルミetc、etc…と、もう、これでもか!っていうくらいいろんな木を扱ったことはありますが、ブナのキズのつきにくさは特別だと思います。

 木っていう素材は硬いように見えますが、ちょっとカドにぶつけたり落としたりすると、すぐに打痕がついて凹んでしまいます。木の種類の中でも硬い木と言われている「ナラ」を使って過去にたくさんの家具を作ってきましたが、こいつは固いわりに根性が無いのか凹みキズがつきやすいんですよね…

 ブナは材料の重さとしてはナラと似た物ですが、ちょっとやそっと落としても「アレ?どこぶつけたの?」っていうくらい無傷で済むんです。似た材質でメープル(カエデ)なんかも比較的キズのつき難い材料なんですが、やっぱりブナの方が上だと思います。

 適度なおもさ…軽すぎず、重すぎず…これはおもちゃのデザインにもよりますが、やっぱブナは適度だと思います(そのまんまですが)。

 加工がしやすい! 作り手側にとっての問題でしかありませんが…たしかに、粘りの強いブナの材質は作り手にとって扱いやすいです(塗装をするとなると別ですが…)

 手触りが良い!これは…よく言われますが…しっかりと磨き上げられた木の表面っていうのは手触りがどれも良いんです…ま、これはブナ特有と言うわけでなく、木特有のコトですね…。
 ただ、ある一定レベルを超えて磨き上げられたブナは「スゴイ」ですよ。一般的に見ることはほとんど無いですが…

 
 とまあ、ここまでブナに関して言われている「一般論」を述べてみましたが…
 ココから先は僕独自の視点も含め、なぜ、僕の工房では木のおもちゃ作りにブナを使っているのか?ということについて、もう少し深い部分まで掘り下げて語ってみたいと思います。


 僕の工房で使われているヨーロピアンビーチ。その名の通りヨーロッパから輸入されるブナ材です。このブナは計画的に植林され、長い目で見て森や山、そこにある生態系を壊さないよう管理しながら伐採される木材なんです。

 最近ではナラやタモなどの広葉樹が中国、ロシアで乱伐、違法伐採され、社会問題になっています。木を使って仕事をする人間が、森や自然に対して無関心でいるわけにはいきません。自然破壊者である木工家の自分は出来うる限り、自然のサイクルに即した形で木を扱うべきだと思いますし、管理伐採されたブナを使うという事には多少なりの意味があると思います。


 そして、木のおもちゃ作りに僕が「ブナ」にこだわる理由
 これは、僕のごく個人的な主観ですが、ブナ特有の「美しさ」。これこそが、木のおもちゃ、子供向けのおもちゃを作る材料にブナを選ぶ1番の理由になっています。


 ブナの木地の美しさ…この部分に執着している人の話ってあまり聞かないんですけど、ブナの木地ってすごいキレイなんですよ。もう本当に!ブナの木地のキレイさってそう…例えるなら、白い肌の美しい秋田美人!って感じです。

 他の家具なんかに使われる木材、ナラやケヤキ、メープルやチェリー、ウォールナットなど、いずれも一般的に「美しい」と評価される材種はたくさんあります。けど、ブナのキレイさはもう別格。文字通り「格が違う」って僕は思います。

 ここで、「ちょっと待て!!聞き捨てならん!なんでブナがチェリーやウォルナットより美しいんだ!オマエ頭おかしいんと違うか!」そう思われた方もいらっしゃるでしょう…

 そう思われたアナタ!マニアですな…

 そう、一般的にブナのことを「スゴイキレイ!ブナサイコー!」なんて言うのは、この業界でも異端です。ブナって「キレイ」「美しい」ってイメージが一般に無いんです。

 でもね

 ウォルナット、メープル、チェリーなどなど、一般に美しいとされる木材たち
 すっぴんの状態で比べたとき、磨き上げられたブナの木地の輝き、スベスベの肌触りにかないますか?いやいや…とてもとても…

 確かにオイルフィニッシュのウォルナット、漆仕上げのケヤキやナラの美しさはすごい。手に触れるのも怖いくらいキレイです。でも、すっぴんじゃあこの人たちダメでなんです。
 この人たちは、化粧して勝負するタイプです。
 都会の女性タイプです。

 対して、ブナは素肌美人。

 ていねいに磨き上げられたブナの木地は人の肌のようにきめ細かく、しっとりとしています。何も塗っていないのに表面は光りを反射し、うっすらと輝くツヤがあります。斑が表面に出ているような材であれば、光を当てる角度によってぎらぎら光り輝くほどです。

 こと、木のおもちゃ
 こと、無塗装で製品にしたいもの。つまり、子供向けの木のおもちゃ

 コレに関しては、何も塗らない、何ものせない状態が美しいブナ。まるで人の肌のようにきめ細かな木地を持つブナが絶対「美しい」ということを声を大にして僕は言いたいと思います。そして、この美しさ、人の肌を感じれるほどのやさしい木地を持つからこそ、子供向け、特に赤ちゃん向けの木のおもちゃにはブナがもっとも適していると僕は思うのです。

 ちなみに、

 ブナの着色塗装はあまりキレイじゃ有りません。とくに木目を透かしてみせるような着色方法は、僕からするとショートケーキに味噌のっけて食べるようなものだと思います。ブナは散孔材(さんこうざい)という木材の性質から塗料や着色料の吸い込みにムラがあって、中途半端に着色すると汚くなるんです。

 ブナを着色するなら木目も消えるくらい塗り潰すしかありません。でも、それもブナ本来の木地の美しさ、きめ細かな手触りを殺すので、ご飯にジャムをかけて食べるような物だと思います。


 まあ、モノ作りというのは自由な物であり、ブナの素材の良さ、特徴もその木地の美しさだけが全てじゃあありません。用途用途によって、デザイナーの意思のもと、市場では色々な扱われ方をしているわけですが、僕のごくごく個人的な主観としてはそんなふうに思っています。

 ちなみに…

 今回のブナに関する僕の評価に疑問をお持ちの方…そんな方は1度、僕の作った「ムーン・ラトル」という木のおもちゃを見てください。このおもちゃは、ブナの木地本来の「キレイさ」にこだわって作ったラトルです。話を面白くするために、ここでは「ブナサイコー!」説を誇張気味に書いてきましたが…まあ、そんなことは忘れてコレを見てみて下さい。僕はこんな感じの飾らないブナの素直な木地がキレイだと思うんです。




 ここからは、蛇足なブナについての豆知識ですが…

 ブナが木材として、家具材として評価されるようになったのはここ150年くらいの近代になってからです。それも「曲げ木」という特有の技術による家具作りが盛んになったからで、それまではブナなんて木はマキ程度にしか使えない木だったんです。


 ちなみに、ブナという字、漢字で書くと ですから。
(ホームページビルダーはこの字は認識してくれないので、画像で作りました…トホホ)

 木偏に「無い」でブナです。樹木界(?)におけるブナの扱い見えてくる感じです…

 「おまえなんか木じゃねぇ!!」

 そんなこと言われながらこんな字をあてがわれたんでしょう…
 でも、僕はそんな不遇のブナが大好きです。
 
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